腕の重だるさと痺れ

昨日、片側の肩から腕が痛だるいといった患者さんが来院されました。

仕事で重たいものは持つけれども、特に捻ったりぶつけたりした覚えはないとのこと。動かしているよりも、じっとしているほうが痛みが強いとのことでした。

 

実際本人が自覚している明確な受傷機転があるケースはまれで、接骨院の多くの痛みはこの患者さんのように「なぜ痛くなったのかわからない」「なぜしびれるのかわからない」ことのほうが圧倒的に多いような気がします。

 

だから最近よく言われるようになった「明確な受傷機転がはっきりしていない症状には、

柔道整復の保険適応をさせるべきでない」という主張は、増えすぎた柔道整復師を減らす効果はあるとしても、患者さんたちの利益にはならないと思うのです。

患者さんにとっては理由があろうがなかろうが痛いわけで、理由がないと保険効かないってつらいと思います。じゃあ病院いけばいいじゃないかと言われそうですが、それで十分な解決になるでしょうか。

自分は別に反社会勢力ではないのでもうグレーな保険請求はしませんが、もうちょっと利用者本位な仕組みな制度に変えていくことはできないのかなと思っています。

 

 

 

少し話がそれましたが、この患者さん、うえを向肩から腕の症状が強くなりました。

痺れが強くなったのです。これは少しまずい兆候ですので、すこし詳しく検査しました。

※ジャクソンテスト(+) スパーリングテスト(+)

握力は指先の筋力に異常はありませんでした。

斜角筋、小胸筋の圧迫でも異常なし。胸郭出口症候群の検査をするも異常なし。

イートンテスト(⁻)ライトテスト(⁻)エデンテスト(⁻)アドソンテスト(⁻)

純粋に、頸部の動きにたいしてのみ、肩の症状の誘発反応が起こりました。

頸部の動きで痺れがでているので、頸部に対して施術を行いたいと考えがちです。

しかしこういった「起こった理由がよくわからない痛みやしびれ」は、姿勢の崩れや筋力のアンバランスからくるケースが多いです。

いわゆる「体のゆがみ」というやつでしょうか。

こうひとことでいうと簡単ですが、具体的には

 

股関節の屈筋拘縮により体が前に引っ張られる→肩甲骨は外側、前方向に移動する→体は猫背になるので首は常に持ち上がり気味になる→首の前側の筋は延ばされっぱなしなので縮もうとする→首の後側の筋は縮みっぱなしなので弱体化する

 

のような感じになっているという仮説をたてました。頸部に関していうと、筋の問題だけでなくおそらく姿勢異常からくる椎間孔の狭窄と神経根の圧迫がでていることが考えられました。

具体的な施術方法としては、股関節と脊椎の矯正、肩甲骨のモビリゼーション、頸部筋の緊張緩和 でした。

一番効果がでたように感じたのは、肩甲骨のモビリゼーションでした。

 

斜角筋と菱形筋に鍼(単刺)をしました。気胸が怖いので浅めですね。

 

施術後、痛みと痺れはかなり改善しました。

術後の生活指導として腹式呼吸の実践とタバコを減らすように勧めました。

「よくわからない首の痛みやしびれ」は循環器系の障害からくることもありますからね。

誤った呼吸パターンが、頸部の筋を過剰に使ってしまうせいですね。

 

 

最後に念のため症状の改善が見られない場合、整形外科の受診を勧めました。

もし頸椎のヘルニアだったら、病院で適当な治療を受けられるかもしれませんからね。

 

どんな症状でも喜んでもらえると本当にうれしいです。

無事に仕事できているといいですね。暑いので熱中症にも気を付けくださいね。